6月22日・23日に開催された西洋中世学会第11回大会において、第1回学会賞・第二回ポスター賞受賞者が決定しました。
第1回学会賞(第11回大会)
- 桑原夏子「トリエステ近郊ムッジャ・ヴェッキアの聖母晩年伝壁画──イタリアにおける聖母晩年伝図像生成初期の様相の再検討と終末思想との関わり」[『西洋中世研究』第8号(2016年)掲載論文]
受賞者からコメントをいただきました。
- 「本論文で扱ったムッジャの聖堂には、その後のイタリア各地の聖堂でさかんに描かれることになる聖母晩年伝の最も古い作例の一つが描かれています。しかし、本壁画は作者も制作経緯も不明であり、欠損部分も多く、美術の中心から離れた周縁の土地の作例であることから、その重要性は等閑視され、十分な研究に恵まれてきませんでした。研究史のメインストリームから逸脱した事象に光を当てて見えてくるものは、メインストリームの理解に対する新たな問いを導くものであり、それこそがさらなる知の開拓につながるものであると、今回の受賞で力強く励ましていただいたように思います。」
第2回ポスター賞(第11回大会)
- 審査員賞: 北舘佳史「クレルヴォー修道院の死者記念」
- オーディエンス賞:桑原夏子「ジョット作《聖母の埋葬》の図像と構図の波及力について」
受賞者のお二人からコメントをいただきました。
「この度は、このような素晴らしい賞を賜り、望外の喜びです。本発表の評価をして頂いた審査員の方々、また、ポスターをご覧頂き、ご意見を頂戴した多くの皆様に感謝申し上げます。西洋中世学会のポスター報告はいつも、多くの方々と交流し、研究の幅を広げ、可能性を探る大変貴重な機会となっております。今回の受賞を励みにして西洋中世研究の発展に少しでも貢献できるように一層の研鑽を積んで参りたいと思っております。」
(北舘佳史・審査員賞)
「本報告は、今年1月から3ヶ月間、オランダ大学機関美術史研究所(NIKI-Florence)の博士研究員として実施した研究成果の一部です。発表会場で他分野の研究者の方々を含め交わした対話によって、一つの学問領域の研究手法に縛られていては見えなかった切り口に気付くことができ、また他者の研究の中に自分の研究との繋がりを発見することもできました。対話に参加してくださった方々に心より御礼申し上げると同時に、オーディエンス賞に選んでいただいたことを心より嬉しく思います。」
(桑原夏子・オーディエンス賞)